けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

雑記

わたぼこりにつまづいてしまう

道端に落ちているわたぼこりが気になって仕方がない。 拾わないと前に進めないんじゃないかという気がする。 立ち止まって、つまみあげるべきか、無視して通り過ぎるべきか、迷っている。 つまみあげるなら、どうやってやろうか。誰か助けを呼ぼうか。手袋を…

鏡のむこう

わかりあえない。 そもそも、わかりあいたいと思っているのだろうか。 一方的に受容されたいだけ?私が大切だとおもうことを、最も身近な他人に同じように大切にしてもらえない。 そう思う私もまた、その人の在り様を、そのまま受け入れることができていない…

私は遠くの時間を見ることが下手だ。遠近感の補正がうまくいかなくてくらくらする。 今日のことしかわからない。来年のことを話そうとすると、主語が”わたし”ではなくなる感じがする。だから、数年先のことを明日のことのように、こともなげに話す人を見て感…

その他

女性として生まれたことに絶望したことはなかったが 男性として生まれなかったことを恨めしくおもったことはある。私は自分が女であることを、できれば忘れていたい。 膨らんできたお尻も胸も生理も、自分の身体だからどうにか受け入れる。 制服のスカートも…

はやくしてくれないと 次の脱皮は 抜け殻と一緒にあなたを置き去りにして 私は別の場所に行くだろうそんな予感があるはやく、はやく、私を捕まえて私がまだ、ここにいるうちに

淡々とカレンダーを塗りつぶしていくような日々を過ごしている。 それでも、その日々が何ものにも縛られることのない、自分の時間であることがうれしい。誰かや、誰かの総体から、切り離された存在として自分を認識できることがうれしい。この1年間で、私の…

ひきよせられるもの

あまり音楽とか写真とかに触れる機会は多くないけれど、たまらなく惹きつけられる作品に出会うことがたまにある。 萩尾望都の表現を借りるなら「ひきよせられる」という感覚がとてもしっくりくる。一番最初にこの感覚に気づいたのは、中学生のときに「世界の…

道ばたの光景

「来年またね」という言葉とともに二人は別れた。 今は三月だから、来年は早くても九ヵ月後だ。 私には長いと思えたその年月の長さと、二人の別れのあっさりさが不釣り合いに思えた。 来年のその時に必ず会える確信があるのか、別れをそれほど惜しむ間柄じゃ…

誰かに肩がぶつかることを深刻には考えずに、次に飛び移りたい石の名前を口ずさみながら歩く。 肩が当たった人々の顔をよくみたら、別に怒ってるわけでもないようだった。 目が合えば、あっちに良さそうな石があったとか、こっちの靴の方が歩きやすいんじゃ…

ひとつの場所に長くいられないのは、自分の中身を覗かれたくないからだ。 自分で嫌気がさしているこの不完全さを、誰の記憶にも記述されたくないからだ。 自分でもうまく理解できない私のことを、知ってほしくないからだ。完全に理解されたいという欲求が、…

手紙をかくこと

私はなんとなく、紙とペンを使って手紙を書くことが好きだ。 いまこの空間を共有していない誰かに、いまここにいる私が書くことばが伝わる。 そのことが、不思議でおもしろいとおもう。ここにいない相手に、時空をまたいで伝えたいことがあって、 宛名に書い…

飲みこむ

生きやすくなったのは、言葉の選び方、表情の作り方、涙の流し方が上手くなったからだと思っていたけど、たぶんちがう。 それらを慎重に行うためにエネルギーを割かなくなったからだ。 誰彼かまわず毒を投げつけて、自分で毒を消化することを怠っているから…

本線が見えない

私の傍若無人な振る舞いは、たくさんの”大人”に、許されながら生きている。 いつまでそれを続けるつもり?

あちらとこちら

自分の意志だけで選ぶものなんてどこにもない。これまでも、これからも。 誰もいない方へ、無難ではない方へ そういう場所に行きたがるのは、 それが何ものにも影響されずに、自分だけの意志で選んだものだと信じたいからなんでしょう? ここに在るというこ…

わかる

提示されたあなたの考え方や癖が、私のそれととてもよく似ていた。 私が「わかる」と口にしたのは、私があなたに対して感じた親近感を一番簡単に、楽に伝える方法だったからだ。「わかる」 いったいどれほどわかっていたのか。 いったい私はあの人の何を知っ…

毎日、似たような夢を見る。目をつむると、私は迷路をさまようひとつの点になる。 いくつかの分岐ごとに、名前の付いた点が生まれる。 私は同時にいくつもの点として存在する。 私はバラバラになりながら、すべての点として同じ瞬間に存在している。

落下の感覚

怖い。 「ちゃんとやれば、大丈夫」と君は言うけれど、私は”ちゃんと”できているだろうか。目を閉じて平均台の上を歩く感覚を思い出す。 一歩前に足場があるとわかっているのに、脳が落下の感覚を押しつけて身体がこわばる。 私の落下が隣の人を巻き込んで一…

ひとつの光景

私が「このような人間である」ということを、周囲の人々はわりあい自然に受け止めてくれていた。それを否定したり、蔑んだりする人はどこにもいなかった。 むしろ、欠点となる部分を指摘して、どうしたら社会生活をより円滑に営めるのかについて助言をくれた…

耳をふさいだまま

「きっとあなたは無難な方の道を選ぶ」そう彼に言われたとき、それを呪いの予言だとおもった。 だから、呪いを振り切るように耳をふさいで歩き出した。ひとの話をちゃんと聞かないから、迷子になった。 もうずいぶん長いこと、今どこにいるのかよくわかって…

次の場所へ

静かにこの場を離れ、次の点へと移動する。遷移せよ。変化せよ。

漂う舟の上で

ひょっとしたら、このちっぽけな存在は、次の波で転覆してしまうのかもしれない。 上手なバランスのとり方がわからなくて、いつもビクビクしている。 バランスを取ろうとすることが正しい対応なのかもわからない。 あっちへ踏ん張り、こっちへ傾け、そうして…

ゼロに収束する

できなかったり、やらなかったりすることを、私は選んでいる。できない自分や社会的に機能していない自分を眺めながら、ぼんやりと「それでいい」と決めていて、 私の活力はゼロに向かって収束しはじめている。 感動に胸が震えた日も、あそこへ行かなければ…

さくら

それは、日本の春に花を咲かせる木の名前です。 うす桃色の花がこぼれ落ちるように咲き、あたりの景色を明るくします。 そして、 全ての花が開いてひと呼吸も置かないうちに、その季節特有の強い風で散ってしまう。

記憶のフィルター

ある楽曲を、彼の遺物としてではなく、”楽曲そのもの”として聴きたいとおもう。 10年前に少年が教えてくれたその音楽は、いまも彼というフィルターを通してしか私に届かない。少年を心底尊敬するから、彼が「よい」と言ったものを「よい」と思い込もうとして…

徒然草を読んでいる

『徒然草』を読んでいて、兼好法師の語り口から一人の友人を思い出した。対象を観察する目と、それを他者に語って聞かせるときの切り取り方が似ているような気がする。 愚かさや滑稽さを的確かつ辛辣にこきおろす同じ口が、次の瞬間には驚嘆や尊敬を素直に表…

記憶の上書き保存

意識的に、あるいは無意識的に、記憶は上書きされ続けて、あったこと、と、なかったこと、の境目が曖昧になる。だから、あの瞬間の映像や音声を映画のように再生したとして、 私の都合のいいように捻じ曲げられてしまった再現映像はもう真実とはいえない。 …

偶然であうこと

言葉は突然やってくる。 ふと手に取った本の中に、あまり話したことのない人との立ち話の中に。

放棄すること

時を止めることはできない。活動を止めて時間に置いてきぼりにされる毎日。 それは自分の可能性をひとつずつ潰していく毎日のようにも思える。 生きることを放棄するような日々が、確実に心をすり減らしていく。

ズルの代償

手足をジタバタさせて、もがくように生きる。 酸素が失われたこの空間から、一歩前の酸素のある空間へと移動するための方法は、それしか知らない。この空間に長くとどまり続けてしまって、息が詰まりそうだ。 私は手足の動かし方を知らなかったわけではなく…

自分で決めたのだから、最後まで、すべてを、誰かのせいにせず、自分はこれでいいと思うのだと言い切って、たまに苦笑いをして頭を掻きながら生きよう。「そんなことをする時間があるなら、もっと有益な事をしなさい」と、心ある人が忠告してくれる。 私がそ…