けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

誰かに肩がぶつかることを深刻には考えずに、次に飛び移りたい石の名前を口ずさみながら歩く。
肩が当たった人々の顔をよくみたら、別に怒ってるわけでもないようだった。
目が合えば、あっちに良さそうな石があったとか、こっちの靴の方が歩きやすいんじゃないかとか、そういうことを教えてくれる人もいた。

肩が当たるということは、
わずらわしくて、面倒で、嫌な思いをすることではないらしい。
むしろ、適度に肩が当たっていた方が、安心している人もいるんじゃないか。
そのことに驚いている。
肩が当たることで私がどこにいるかわかるし、ぶつかった反動の方向で、どこに向かっているかが想像がしやすいから、だろうか?

肩が当たる。
それくらいの距離感がちょうどいいのかもしれない。

一時期の停滞とはうって変わって、風景がめまぐるしく動いていく。
私がゆるやかに動き始めたから。
けれどそれ以上の速度で、ぽつんと立つ私のことを見つけてくれた人々が、私をどこかへ連れて行く。