けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

電話をとる。ハキハキとした大きな声で名前を確認されて、耳に圧力を感じる。電話の向こうにいる知らない人に耳から侵略されているような気持ちになる。事務的な会話を続ける。定型文が流れ込んでくる。その丁寧な言葉遣いを反芻しながら、私は私のかすかな…

瞼の表皮が乾燥して剥がれ落ちてくる。 口の周りに赤黒い吹き出物ができる。私という容れものの中で、形を持たずにドロドロと渦巻いていたものたちが、とうとう溢れ出してくる。腐食の進んだ表皮は全体的にぼろぼろで、この赤黒い膨らみをつまんで潰せば、私…

私は常に他者から何かを受け取って生きている。受け取り続けている、といってもいいくらいだ。 私は他者に渡し続けているのだろうか。 やりとりの収支がひどく気になる。

拳銃を突きつけられる夢を見た。 誰かが手のひらサイズのおもちゃみたいな拳銃を渡してくれたが、私はそれを丁寧に断って、両手に出刃包丁をひとつずつ構えて応戦することにした。 拳銃を構えた人が窓の方から次々とやってくる。先頭を走る二人の顔を私は知…

死のありか

死は特定の場所にいるものではない 死はあらゆる小道に立っている 私たちが生を見捨てるやいなや 死は君の中にも私の中にも入りこむ『老いてゆく中で』より ヘルマン・ヘッセ

ことばによってカタチを得たものはわたしではなく、わたしの抜け殻だ。 延々と脱皮を続け、抜け殻を数珠つなぎにすることで、わたしはわたしの存在をわたしに示そうとする。 わたしが存在するための機関を動かすために、わたしは幼若であり続けなければなら…

自分のカタチをした穴に、すっぽりと嵌まり込んでしまったみたいに身動きがとれない日 笑ってやり過ごすにはしんどくて、電話の着信もきかなかったことにしたい日