けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

ひとつの場所に長くいられないのは、自分の中身を覗かれたくないからだ。
自分で嫌気がさしているこの不完全さを、誰の記憶にも記述されたくないからだ。
自分でもうまく理解できない私のことを、知ってほしくないからだ。

完全に理解されたいという欲求が、不完全な理解を拒絶する。

誰からも完全に捕捉されないことで、私は私だけの居場所を作っている。
誰の視線からも隔絶された秘密基地のような場所で、
私はうずくまるように毛づくろいをし、傷をなめ、私自身のかたちを確かめる。