けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

記憶のフィルター

ある楽曲を、彼の遺物としてではなく、”楽曲そのもの”として聴きたいとおもう。
10年前に少年が教えてくれたその音楽は、いまも彼というフィルターを通してしか私に届かない。

少年を心底尊敬するから、彼が「よい」と言ったものを「よい」と思い込もうとしている、ような気がしている。
少年がそれを「悪い」といったら、自分の感覚に自信を持てない私は「悪い」と思うのではないか。

それは、なんだか信仰みたいだ。無意識のうちに組み込まれてしまった信仰。

どうして私は少年の視点をトレースしようとするのだろうか。彼の感覚を自分のものにしようと躍起になるのだろうか。

同化して、何をしようというのか?


どうしたら、もう一度その楽曲との出会いをやり直すことができるだろうか。