けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

漂う舟の上で

ひょっとしたら、このちっぽけな存在は、次の波で転覆してしまうのかもしれない。
上手なバランスのとり方がわからなくて、いつもビクビクしている。
バランスを取ろうとすることが正しい対応なのかもわからない。
あっちへ踏ん張り、こっちへ傾け、そうして最後は疲れてしまって、しばらく漂うように生きたりする。

しばらくゆっくり休んだら、なんだか力が湧いてきて、気合いを入れて舟をこぎ始める。
顔を上げるといろんな景色が見えすぎる。世界にはたくさんの美しいものがありすぎる。
漂うように生きた怠惰を呪い、過ぎてしまった時間を取り戻そうと、一度にぜんぶを手に入れようと、舟は蛇行を始める。

するとまた、舟はぐらぐら揺れ始めて、私は必至で両足を踏ん張って、途中で疲れ果てて漂ってしまう。

ずいぶん長いこと、同じ失敗を繰り返している。

ひとつずつ拾っては積み上げる。
両手いっぱいの石を拾わずに、片手にひとつずつ拾っては積み上げて、形あるものを残してから次の石を拾うこと。
そういう静けさと忍耐力が、今の私には必要なんだ。