けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

手紙をかくこと

私はなんとなく、紙とペンを使って手紙を書くことが好きだ。
いまこの空間を共有していない誰かに、いまここにいる私が書くことばが伝わる。
そのことが、不思議でおもしろいとおもう。

ここにいない相手に、時空をまたいで伝えたいことがあって、
宛名に書いた相手のいる”いま、ここ”ではない空間を想像しながら、あえてゆっくりと時間をかけて、ながい会話をする。

その過程で、普段の会話や日記の文章にはあらわれないことばがするすると紡がれていくことがある。
紙の上に、私自身も意図しない陰影のある”私”がたち現れて、動揺してしまう。

着飾ったことばで自分を装おうとしているのだろうか。
それとも手紙を書くという行為によって、いつもは見えない自分の内側に触れるきっかけを得たのだろうか。