けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

とどまらないもの

ヘーゲルの解説書を読みながら、頭がぞくぞくしている。 書かれていることをそのままむしゃむしゃと飲み込んでしまいたい。 文字を追うスピードを、こんなにもどかしく思うのもひさしぶりだ。言語やことばについての章を読んでぼんやり考えたことを思い出す…

須賀敦子のことば

須賀敦子の本を読んでいる。 私が近ごろ思ったり考えたりしていた、ほんとうに多くのことがらが、すでに彼女のことばで書かれていた。ここまで、ことばがするすると身体に溶け込むように入ってくる感覚は久しぶりだ。 昔話の中に登場する彼女自身の年齢や立…

徒然草を読んでいる

『徒然草』を読んでいて、兼好法師の語り口から一人の友人を思い出した。対象を観察する目と、それを他者に語って聞かせるときの切り取り方が似ているような気がする。 愚かさや滑稽さを的確かつ辛辣にこきおろす同じ口が、次の瞬間には驚嘆や尊敬を素直に表…

感受性の領分

図書館で『感受性の領分』(長田弘)を借りてきた。これは深呼吸をするための本だ、とおもう。 余計な感情を宙に浮かせて、空いた隙間から新鮮な空気を取り込むための。 押し流されるような大きな流れから少し遠ざかって、自分のタイミングで呼吸をするため…

ソフィーの世界

前回、江戸川乱歩『人間椅子』のラジオドラマ版をみつけて、単純作業のBGMとしてずいぶん優秀で気に入った。タイトルはよく耳にする作品だから内容は知りたい、しかし本を読むのは少し面倒だ…という怠け者には、音声で楽しめるというのがよい。 他の作品を探…

亡霊と記憶

ちょっと見かけた長田弘氏の文章が気になって、引用本の『感受性の領分』をじっくり読んでみたい気になった。残念ながら大学の図書館にはなく、ならば買おうと検索したら、どれも中古品の取り扱いだった。あらまぁ。市立図書館に行くか、中古で買うか。どう…

人間椅子

単純作業のBGMに『人間椅子』(江戸川乱歩)を選んだ。佐野史郎の朗読で。 この作品を構成している、一通の長大な手紙の書き手について妄想する。 皮一枚を隔てて触れ合う顔も知らない女の感触について饒舌に書きたてる男。 それは怪文書であり、斬新なラブ…

フラニーとズーイ

本の中のフラニーは20歳。私は27歳。25歳のズーイがフラニーに語りかける言葉に、頭を横からガツンと殴られるようで。世界や他者に絶望して自分の殻に閉じこもった妹に、兄が示した愛情と警告は、 現実世界から逃避しがちにうずくまっている私の精神をドコド…

カヴァレリア・ルスティカーナ

ひょんなことからカヴァレリア・ルスティカーナという本を手に取ることになった。図書館で「マラリア」という検索ワードで本を探していたら、 感染症関連の文献が連なる中に、なんだかうまく読めないカタカナだらけの題名が見えた。 よくわかんないけど借り…

スーザン・ソンタグ

スーザン・ソンタグの『この時代に想うテロへの眼差し』を図書館で借りてきた。 本来の目当てはサミュエル・べケットの『ゴドーを待ちながら』だったのだが、 図書館のモニタで検索していたら、ゴドー関連でたまたま彼女の本がヒットした。彼女がサラエボで…