図書館で『感受性の領分』(長田弘)を借りてきた。
これは深呼吸をするための本だ、とおもう。
余計な感情を宙に浮かせて、空いた隙間から新鮮な空気を取り込むための。
押し流されるような大きな流れから少し遠ざかって、自分のタイミングで呼吸をするための。
国内外の様々なことばを引用しながら思索にふける。
著者のまなざしは過去に向きがちで、彼の郷愁に共感できない部分ではひっかかる。昔の方がよかった、と言いたげな文章を読むと、そうとばかりも言えないだろう、と思う。
それでも、著者の思索に身を預けるのは心地よく、たくさんの引用が新しい世界の存在を示していて、それがとても嬉しい。