けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

私は遠くの時間を見ることが下手だ。遠近感の補正がうまくいかなくてくらくらする。
今日のことしかわからない。来年のことを話そうとすると、主語が”わたし”ではなくなる感じがする。

だから、数年先のことを明日のことのように、こともなげに話す人を見て感心してしまう。
目的地の点と現在地の点をつなぐためのルートを知識として、あるいは経験として知り、紙の上に線を引くようにそれを語る。
簡単そうにやってみせるけど、ひょっとしたら、長いこと考えて考えて、ようやくひくことのできた線だったのかもしれない。
何かを捨て、何かを選ぶことで、やっとのことでひくことができた線だったのかもしれない。