けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

その風が吹いた理由を知っているか

彼女は言った。

「自分の行きたい方向に行くために、風が吹くのを待つのではなく、風を起こすのです。」



彼女の言葉が妙に耳に残るのは、

どこにむかって風が吹いているか

この風にいつ乗るか

いつもそんなことを気にして生きてきたからだ。

大きな流れが行く方へ

強い風が吹く方へ

自分がそちらへ行きたいかどうかは尋ねずに。



今吹く風は自然に生まれたわけではない。

この風はいつか誰かの意志によって起こされたのだ。

強くあちらへ吹くように。見知らぬ誰かの追い風となるように。