けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

わたしにとってあなたが
これほど大きな存在であるわけは
あなたが
はじめて
わたしの姿をとらえてくれたひとだからだ。

あなたがわたしをみつけてくれるまで
わたしはとうめいで
わたしは自分のかたちをしらず
わたしはそこにいなかった。

あなたはわたしにことばをおしえ
わたしのなかからことばを引き出し
ことばが
わたしにかたちをあたえてくれた。

けれど
いつのころからか
ことばはまざり
わたしのことばはあなたの思考と混線し
わたしはあなたの眼球を内包し
境目があいまいになり
わたしはあなたの目を通して世界を覗き
そしてわたし自身を見つめていた。