けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

M.K.

それは、100年前に異国の山岳地帯を探索した研究者が書いた文章だ。
彼は発見の地に至るまでの道のりをただ示すのではなく、見える景色や肌に感じる空気について淡々と克明に描写している。
落ち着き払ったような顔をして、そのじつ動悸が早まるのを必死で抑えているみたいな文章を、私はとても美しいと思う。
物語をうたうように読み上げたくなる。

その文献はずっと手元にあったのに、今まで何度も目にしてきたのに、なぜだか今、とても気になる。