けものがゆく道のむこう

いいにおいがする方へ かすかな気配をたどる道

カヴァレリア・ルスティカーナ

ひょんなことからカヴァレリア・ルスティカーナという本を手に取ることになった。

カヴァレリーア・ルスティカーナ―他11篇 (岩波文庫)

図書館で「マラリア」という検索ワードで本を探していたら、
感染症関連の文献が連なる中に、なんだかうまく読めないカタカナだらけの題名が見えた。
よくわかんないけど借りちゃえ。ということが気軽にできる図書館は素敵。
かくして、その本はやってきた。

イタリア人作家ジョヴァンニ・ヴェルガの短編集である。
表題作は『Cavalleria Rusticana』で、
ピエトロ・マスカーニによる作曲でオペラにもなっており、なかでも間奏曲の『アヴェマリア』が有名であるらしい。

この本が「マラリア」という検索ワードにひっかかったのは、『マラリア』という別の短編が収録されているから。
マラリア』には、シチリアの田舎でマラリアに苦しむ農民たちが描かれている。
マラリアが蚊によって媒介される感染症だということが発見されたのが1897年。短編が執筆されたのは、それより前のおそらく1880年代。
当時の人々はユーカリの香気が、マラリアをもたらす”悪い空気”を追い払うのだと信じていた。
作中では、瀕死の小作人が硫酸キニーネユーカリの煎じ薬を服用している。

汽車が通り過ぎるたびに砂埃が舞うどんよりとしたシチリアの平原と、そこに点々と植えられたユーカリの描写が印象的なお話。